フランチャイズの発展

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今後の展望

すでにお話したように、フランチャイズはあらゆる業界で採用されているわけですが、では、今後の展望はどのようなものでしょうか。

業種によって差はありますが、おおまかな傾向として、大胆な二極化が進むと考えられます。つまり、最大公約数的なマクロの顧客を対象にするか、逆に、特定の志向を明確に持ったニッチな顧客を狙うか、です。

TVや映画でいえば、一方に人気スターが顔を並べる大作があり、他方、マニアックなお笑いの深夜番組や、単館公開のアート系作品がある。どちらも一定の支持を得ており、また、対象とする層が異なっているため、顧客を食い合うことがない。淘汰されていくのは、中途半端な中間層の作品です。誰にもほどほどに気に入られるということは、結局は誰にも気に入られないということです。

現代の消費者は、「そこそこのもの」は別に求めていません。フランチャイズに求めているものは、よく知られたブランドの名前から得られる安心感か、でなければ、ここなら何かやらかしてくれそう、という期待感なのです。

これはとくに変わったことを提案しているわけではありません。ビジネスの基本は、いかによその店ではなくあなたの店を選んでもらうかにあります。自分の欲しいものを扱うお店がもし町に1軒しかなければ、それが欲しいときはその店に行くしかありませんが、車や電車でよそに買いに行くこともできますし、インターネット通販も一般的になってきました。

そんな状況で勝ち残るには、立地がいいとか競争相手が少ないといった条件ももちろん大切です。しかし、立地が少々悪かろうが、競争相手がひしめいていようが、お客様にとって「ここしかないから行く店」ではなく、「いろいろな選択肢の中からあえて選ぶ店」になれば、勝ち目は充分にあるのです。

メリット

メリットについて、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。

まずは、フランチャイザーにとって。
通常、事業を拡大し、店舗数を増やすのは並大抵のことではありませんが、フランチャイズ制をとれば、自社で投資する額は安く抑えることができます。
さらに、開店した後も、定期的なロイヤルティーが入ってきます。これは、リスクの少ない収入ルートです。店舗数が増えれば増えるほど、ロイヤルティーも増大していく計算です。

次に、フランチャイジーにとって。
独立して事業を興すことは、やはり簡単なことではありません。何から何まで独力でやることはたいへんな苦労ですし、必ずしもうまくいくとは限りません。フランチャイズの場合、自力で開業するより初期投資は増えますが、開業までの道のりが安定していること、また、フランチャイズのブランド力を活用できることを考えると、結果的には、開業時のリスクを少なくすることができる方法だといえます。

最後に、お客様にとって。
あなた自身がお客様になった場合を考えてみてください。急いで食事をしなければならないとき、初対面の人と待ち合わせをするとき、誰でも名前を知っているフランチャイズの飲食店を利用することが多いのではないですか?
または、あまりなじみのないサービスを利用するとき、ふだん買わない買い物をするとき、よく見かけるフランチャイズの店を選びませんか?
それがつまり、ブランド力です。物のたとえで商売のことを「カンバン」という言い方をしますが、お客様は、まさによく知っている看板を見て、一定の品質を期待してやってくるのです。

まさにフランチャイザー、フランチャイジー、お客様、三者それぞれにとって利点があるシステムがフランチャイズなのです。
ただし、ひとつ注意するべき点は、これは、物事がうまく進んでいる場合に限られるということです。なんらかの理由でブランド力が低下したであるとかといったことがあると、上に上げたようなメリットはそのままデメリットに転じかねません。

どうしてそんなに広まったか?

そもそも、権利・ノウハウを提供する側(フランチャイザー)と提供を受ける側(フランチャイジー)双方にとって利点があるのがこのシステムです。すでにお話したとおり、この原則にのっとっていれば、業種はほとんど不問、ほぼあらゆるビジネスに適用できるのが、これほどまでに広く浸透した理由です。

日本では、1960年代ごろから不二家(レストランおよび洋菓子販売)やダスキン(清掃用具のレンタル)などがこのシステムを採用し、成果を挙げました。

提供する側であるフランチャイザーにとっては、低コストで事業を拡大できます。また、リスクが少ないこと、ロイヤルティーによる安定的収入が期待できることも広まった理由です。

一方、提供を受ける側であるフランチャイジーは、フランチャイザーからビジネスのやり方をパッケージで受け取り、比較的短期間でノウハウをマスターすることができます。また、フランチャイザーの持つブランド力は、お客様にとってなじみ深いため、集客にも有利なのです。

ちなみに、アメリカの場合、国内のすべてのフランチャイズの経済規模を国家予算に換算すると、世界で7番目の経済大国が誕生することになる、という試算もあります。