メリットとデメリット

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完全独立自営の場合

完全に独立して自営業を営むことは、やはり、ギャンブルに似た面を持っています。つまり、当たればデカイかわり、外れればすっからかん。
ギャンブルと違う点があるとすれば、運だけではなく、努力と研究が大いにモノをいうところです。

独立自営のいちばんのうまみは、自分で好き勝手に経営することができる点です。業種も、店の名前も、営業時間も、定休日も、みんな自由に決めることができます。
わずらわしい人間関係からも、かなりの部分、解放されます。

経営方針を決めるのも、その方針に従って経営するのも自分ですから、朝、思いついたアイディアを、その日のうちに実行することも可能。上司のハンコをもらったり、何度も会議にかけたりする必要はありません。
そして、そのアイディアがヒットすれば、全部自分のところに還ってきます。手柄を横取りされる心配もなく、ダイレクトに収入が増える喜びを味わえます。

自営業は、元手がなくても、店舗がなくても開業できます。
経営コンサルタント、フリーライター、小説家、私立探偵。その肩書きが入った名刺さえあれば、誰でもそう自称できます。もちろん、実際に収入に結びつくかは別問題ですが。

うまくいったときの喜びが大きいかわり、失敗したときの痛手も、並大抵のものではありません。自営業という小さなボートは小回りが利く反面、会社という大型客船ほどは暴風雨に強くないので、ちょっとした波や風ですぐに転覆してしまうかもしれません。

さらに、失敗したときも自己責任です。
会社のプロジェクトで大赤字を出しても、せいぜい地方の営業所に転勤させられるか、出世コースを外れた部署に異動になるくらいのものですが、自営業では、失敗は即座に明日の生活に響いてきます。

ひとによっては、自営業のその自由さにもプレッシャーを感じるかもしれません。
何から何まで自分で決めなくてはいけない事態は、会社勤めの人間には想像しにくいことでしょう。従業員を置かずに自分だけで店を切り盛りする場合、場合によっては土・日・祝日も店に出ていなければなりません。

ハイリスク、ハイリターンな、スリルにあふれた一面を持っているのが、独立自営という生き方なのかもしれません。

フランチャイズの場合

フランチャイズのシステムを利用すると、比較的簡単に自分の店を経営することができるようになりますが、それなりに制限もいろいろとあります。

フランチャイズのよいところをひとことでいうとすれば、商売のノウハウが得られることです。
完全に独立自営する場合、なにからなにまで自分たちで考えなくてはいけません。商品の仕入れ、宣伝、経営方針の決定、経理。ぜんぶ自分たちの力でやるとなると、たいへんです。
フランチャイズでは、いわばそういったノウハウを、本部と契約して買うわけです。

ノウハウと同時に、ブランド感も手に入れることができるのがもうひとつの利点です。
お客様にしてみれば、まったく知らない店よりは、ふだんからいろいろなところで目にするチェーン店のほうが、利用するうえでも安心ですよね。経営する側とすれば、ライセンス料を払ってもなお、それを上回るだけの集客=利益があれば問題ないわけです。

会社勤めとは違って、曲がりなりにも、身分は経営者です。一国一城の主として、店を切り盛りする満足感は捨てがたいものがあるでしょう。

デメリットは、メリットの裏返しです。

まず、一般的に、フランチャイズのライセンス料を払わなくてはなりません。これの金額、率はさまざまですので一概には言えないと思います。

次に、ある程度の画一化は避けられません。やってきたお客様がすぐに「ああ、○○のチェーンなのだな」と分かるように、店の外観、営業時間、取り扱う品物、従業員の服装、などに統一感が求められます。
場合によっては、自分の店なのに、自分の思い通りの経営ができないと感じることもあるかもしれません。

極端な話、自分で経営している店舗でも、勝手な名前をつけるわけにはいきません。「○○ストア××店」となるのがふつうです。それは耐えられない、自分のセンスでやりたい、という方には、フランチャイズは向いていないでしょう。

会社勤めの場合

会社勤めの最大のメリットは、なんといっても経済的、社会的な“安定”でしょう(このごろではそうでもないのかもしれませんが……)。

会社は金を稼ぐ組織ですから、その組織がうまく機能していれば、あなたは毎月決まった給料をもらうことができる仕組みになっています。
多少業績が悪化しても、すぐに収入がゼロになることはありません。

社会保険をはじめとした各種福利厚生の充実も、会社勤めならではの魅力です。
また、大きな会社、世間に名の知れた会社で働いていれば、それだけで世間の信用を得ることもできます。
自分ひとりではムリなプロジェクトも、会社の力を借りれば進められるかもしれません。

一方のデメリットは、組織の一員としての義務を果たす必要があることです。

会社にもよりますが、決まった時間に出勤し、決められた仕事をこなし、場合によっては、上司のご機嫌を伺ったりお客を接待したりすることもあるでしょう。
上役、同僚、部下との人間関係を円滑に進めることも、義務ではないのかもしれませんが、まあ必要不可欠です。

そうしたことをソツなくこなしていても、会社の利益が倍になったからといって、給料が倍になることは、まずありません。また、自分のやりたい仕事ができるとは限りませんし、やりたくない仕事をしなくてはならないときも多いのが会社勤めです。

結論を言えば、組織の一員としてある程度の安定が保障されているかわりに、その組織の一員としての最低限の義務を果たさなくてはならないということです。いろいろ理不尽な話も聞きますが、理屈の上では、筋が通っています。あまり無茶をするとクビになることもあるかわり、どうしても水が合わないと思ったら、やめて別の会社に移ってもいっこうにかまわないのです。